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【 CIOの勧め 再び 】 [アメリカ]

【 CIOの勧め 再び 】 

以前のブログで、会社はCIOというポストを設けるべき・・と提案しました。CIOというと財務担当を連想しますが、私が提案するのは情報担当の最高執行役員の事です。 

今、多くの企業では、対外的な情報発信は、広報部長(または室長)、IR部長(室長)などが担当し、特許の担当は知的財産部長などが担当しています。でも彼等は役員手前の人達で経営に関する大きな責任や裁量権を持っている訳ではありません。

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しかし、近年、企業からの情報発信の重要性は、ますます重大になり、知的財産に関する係争も、ますます深刻になり、経営の根幹に関わる問題も発生しています。企業経営について責任を持つ人が登場すべき場面が増えているとオヒョウは思います。

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先日の、NHKの「クローズアップ現代」では、パテントトロール(パテントマフィア)の問題を取り上げていました。 普段、この番組をちょっと批判的に見ているオヒョウですが、この回は、参考になる貴重な情報を正確に報道しており、高く評価したいと思いました。ゲストの幸田弁護士の説明も的確でした。オヒョウは、それまでパテントトロール(日本語で言えば、特許ゴロ)の話は、ちらっとは聞いていましたが、詳しくは知りませんでした。

話を聞けば、善意のメーカーからひたすらお金を巻き上げる事を狙った点では、一時期米国で流行ったサブマリン特許の話と似ています。 でもパテントトロールの場合は、自分で発明もせず、自分で製品製造もせず、他人の特許でお金だけふんだくろうという訳で、より悪質です。

そもそも、こんな方法で、労せずして大金をせしめる事が流行っては、まじめなものづくりをするのがばからしくなってしまいます。米国では、電話とコンピューター端末だけを使い、本当の価値生産をしない人が、一番儲けていますが、パテントトロールはその典型です。このような存在を認めていては、米国はますます衰退するでしょう。それでも結構ですが、日本がとばっちりをくうのはごめんです。

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実は、パテントトロールからの訴えというのは、暴力団からのいいがかりに似たところがあります。 こちらが毅然とした姿勢で臨めば、被害は相当量防げると考えるべきです。

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「クローズアップ現代」では、相手(パテントロール)が社長を証人として指名すると、法廷に立つのを嫌がる、日本の社長は、弱気になり和解に応じる方向へ転じる・・と説明します。これは確かにありそうな話です。誰だって、裁判の被告席(証人でも同じ事)に立つのは嫌な物です。 相手の弁護士から、不躾で不愉快な質問を浴びせられ、回答を迫られるのです(しかも通訳がつくとはいえ英語ですし)。

でも、考えてみれば、経営者たるもの、自分の会社が訴えられれば、公の場に出て、反論するなり、会社を弁護するのは当然の責務じゃないでしょうか? 証人として召喚され、うろたえて「どうしてこんな事になるのか?」と責任の無い知財担当者を責めたり、いやな事から逃げる為に、「金で解決できる事なら、金で解決しろ。和解できるものなら和解しろ」などと言う経営者は既に無能です。

そんな経営者は引退すべきです。 

技術力を持つメーカーであれば、最高経営責任者は知的財産に関して最低限の知識は持つべきでしょうし、自分自身は英語を話さなくてもいいですが、外国人と相手の土俵で議論できないような経営者も許されるべきではありません。 

そして、その弱点を衝いたパテントトロールは確かにスマートです。

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それにしても、問題は多くあります・・・。

第一に知的財産に関する係争は、医療過誤裁判と共に、陪審員制度に最も馴染まない事案です。 米国の陪審員制度は、日本の裁判員制度とは異なり、陪審員は、法律に違反しているか否か、或いは有罪か無罪か、責任があるか無いか・・簡単に言えば、シロかクロかだけを決めます。

しかし、知財係争はそれが難しいのです。 知財係争では、極めて専門的で複雑な事柄について議論がなされ、専門知識を持つ人しか判断をくだせません。素人である一般市民の、素朴な判断が尊重される陪審員制度が、最も馴染まない問題です。  

知的財産に関する係争は、本来判事が裁定を下すべき案件なのに、陪審員制度が適用されているという問題を、知財先進国、訴訟先進国である米国が放置しているのは不可解ですが、米国の利益を優先するレーガンのプロパテント政策による恣意的なものかも知れません。

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第二の問題は、米国の地裁段階では、地域によって判断が変わるという問題です。 米国でもDeep Southと呼ばれるテキサス州の東部、ルイジアナ州やミシシッピ州、アラバマ州などは「保守的」です。

保守的というのは、日本での意味とはちょっと違います。キリスト教原理主義だったり、米国国粋主義だったり、しばしば人種差別主義だったりします。 彼らが陪審員になった場合、アメリカ人と外国人、米国企業と外国企業の争いであれば、偏った判断が当然予想されます。

そんなバカな・・とは思いますが、実例があります。 以前、ルイジアナ州のバトンルージュで、日本人留学生の少年が、間違えた家を訪問したというだけで、玄関先で射殺された事があります。その刑事裁判では、陪審員全員が発砲した被告人を無罪としています。 

海外企業との裁判は、Deep Southで行え・・というのは米国企業の間では当然の作戦かも知れません。 トヨタがハイブリッドカーのシステムについて、特許侵害であると提訴されたのも、テキサス州東部の裁判所です。 

でも、原告側とも被告側とも殆ど縁の無い遠隔地を、裁判の場所に選ぶ事自体、おかしな事です。 鳩山首相は、オバマ大統領に対して、これらの日本が不利になる不当なシステムを改める様、要求すべきですが・・・彼はどうするでしょうか?

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訴えられた企業側も、対抗すべき点はすべきです。裁判する場所を変更するよう要求すべきでしょうし、陪審員の忌避、交代要求もすべきでしょう。証拠資料の英訳の手間も惜しむべきではありません。費用もかかりますし、高度の経営判断も必要です。

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それを社長ができないのであれば、知財問題対応の権限を一任された上席執行役員を持つべきです。 できれば弁理士か弁護士資格を持った専門家で、それをCIO ( Chief Information Officer )としてはどうか?とオヒョウは思うのですが、実行している会社は日本ではごく希です。このままではパテントトロールの餌食になる事は明らかなのですが、政府も企業も・・・無策です。


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