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【 映画館へのノスタルジー 】 [映画]

【 映画館へのノスタルジー 】

 車の中で音楽を聴いていると、五輪真弓の「愛の蜃気楼」が流れました。これは、オヒョウのとても好きな曲ですが、五輪真弓が歌うバージョンより木の実ナナが歌うバージョンの方がしっくりときます。 

それはなぜかと言えば、オヒョウにひとつのTVドラマの記憶があるからです。木の実ナナが歌うこの曲が、ドラマ「港町純情シネマ」のエンディングに使われていて、ドラマのムードにあっていたからです。 1980年の作品です。

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銚子の上空から利根川の河口を渡り、波崎町に至る空からの風景をバックにこの曲が流れるのです。ドラマは、利根川の渡し船の船頭をする主人公の西田敏行、その兄で、閉館がほぼ決まりの流行らない映画館の館主の室田日出男、それに川谷拓三や、伊東蘭などが絡む、ペーソスにも溢れたコメディです。毎回、名作映画のオマージュとなる場面が登場し、それは西田敏行の妄想なのですが、ちょうど「男はつらいよ」の後期の作品の出だしみたいなものです。 このドラマが脚本家市川森一の出世作ですが、ストーリーの中心にあるのは失われていくものへのノスタルジィーです。

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銚子大橋の無料化で渡船は廃止になるでしょうし(もうなりました)、港町の映画館も風前の灯火です。まだ時代は昭和でしたが、失われるものへの愛着が募る人は多かったのです。

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閉じられていく映画館へのノスタルジィーをテーマにした作品は他にも、たくさんあります。 いきなりアニメの話になりますが、藤子・F・不二雄の「キテレツ大百科」には、昔のフィルム運びのアルバイトの話が登場します。 主人公の父親が学生時代にしたアルバイトで、今はその映画館もなくなった・・・と感慨に浸る話です。実は、このフィルム運びのエピソードは「こちら亀有公園前派出所」にも登場しており、どちらがアイデアを盗用したのではないか?と思います。但し、ストーリーの出来は、「キテレツ大百科」の方が数段上でしたが・・。

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映画では、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督の「蜂の旅人」で、主人公のマルチェロ・マストロヤンニが、昔暮らした街を訪れ、既に廃業になった映画館で一夜を過ごす場面があります。 そして、テキサスの田舎町の映画館が廃業になる話が登場するのは、ピーター・ボグダノビッチ監督の「ラスト・ショー」です。ボグダノビッチ監督は、あくまで白黒でしか表現できない、派手ではないアメリカを撮影する人で、オヒョウは彼の映画を観てから、アメリカに対するイメージが変わりました。

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音楽でも幾つかありますが、70年代で言えば森田童子の曲で「センチメンタル通り」というのがあります。 街を去る友と、最後に、寂れた映画館でロックハドソンのジャイアンツを観よう・・という話です。

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70年代~80年代に、廃れていく映画館への愛惜を表した作品が日本だけでなく、各国で作られたのは・・・、なぜでしょうか?国によって時間差はありますが・・・、映画産業の衰退が70年代~80年代に進行したからでしょう。 実は映画館の衰退には、何段階かがあります。

第一段階は、テレビの普及によって、映画館の観客動員数が減った時で昭和30年代です。第二段階は、映画のソフト(コンテンツ)が劣化し、映画ファンが減った時です。 

第二段階は、国によって時間差がありますが、日本の場合70年代に進行しています。 お金をかけたまとも作品が作られなくなり、苦し紛れにヤクザ映画やロマンポルノの制作に走り、心ある映画ファンをどんどん幻滅させていったのです。第二段階を経て、地方の映画館は激減しました。昭和世代の人達が思い出に持つ我が心の映画館は、その頃、つまり70年代~80年代その頃に無くなったのです。

更に、レンタルビデオ店が普及し、VHSテープより便利なDVDや、迫力のある大画面テレビが登場して、ますます映画館はピンチです。今はその第三段階と言えます。

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ではこれからどうなるのか・・?オヒョウの家がある茨城県鹿嶋市では常設の映画館は絶滅しました。オヒョウの子供はどこで映画を観るのか・・・と言えば、つくばや成田のシネマコンプレックスまで出かけるか、文化センターで開かれる映写会(文科省推薦に限ります)に行く事になります。面倒ですが、それでも良質な映画を観られるなら、ありがたい事です。 

東京にいれば・・・、岩波ホール辺りで珍しい佳作を観る事ができるのですが、田舎暮らしでは仕方ありません。

 しかし問題はこれからです。日本は映画館衰退の第四段階を迎えます。それは、ブロードバンドの本格的普及と、デジタルコンテンツの扱いに特に優れた新しい電子デバイスが登場するからです。

電子デバイスとは ヘテロジニアスマルチコアのCPUであるCellです。元々はソニーがPS3用に開発したもので、デジタルの映像を超高速で処理します。 本来ゲーム機などには勿体ないCellを、東芝がパソコンやテレビに採用するそうです。それとFTTHを組み合わせれば、殆どの映画は、オンデマンド方式で、自宅でリクエストして鑑賞できるようになります。 

そうなると、シネマコンプレックスも岩波ホールも要らなくなります・・・。多分・・・2,3年後にはそうなります。平成の少年達には我が心の映画館は無くなるのです。

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では、オヒョウの青春時代の記憶に重なる、我が心の映画館はあるのかって? それはあります。渋谷の全線座という、それは汚い映画館で、そこで古い映画の3本立てを観ました。 たしか1970年代の末期に廃業したはずで、あの映画館を知っているというだけで年齢がばれてしまいます・・・・・。当時、渋谷をテリトリーとしていた人達にはなじみがある映画館です。 何時だったか、初対面の人に、全線座の話をしたら、相手から鋭い詮索をされました。 まずオヒョウが首都圏にいた年代を言い当てられ、更には通っていた学校も推理され(渋谷に乗り入れる私鉄の沿線の学校)、更には、ニヤッと笑ってこう言われました。「 オヒョウさん、全線座に通っていたという事は、ガールフレンドはいなかったのですね。 だってあの頃の全線座は、女の子を誘っていくような映画館ではなかったですからね 」


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