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【 アジア共通通貨の夢 その1 】 [ビジネス]

【 アジア共通通貨の夢 その1 】 

鳩山論文なるものが、世界中に流れ、反響を呼んでいるそうです。著作権者の鳩山首相の了解を得ずに、複数の人がそれを引用してレポートを書いている事に本人は懸念を表明していますが、自然科学の研究者だった人の弁とも思えません。 

論文のオリジナルを掲載し、版権を持つ「Voice」は既に翻訳を許可しており、その英語版がインターネットに流れたのなら、不特定多数が読むのは当然予想されることであり、「勝手に読んで引用したな・・」というクレームは通用しません。

勿論、誤訳や曲解、中身の改変があればクレームすべきですが、そうでなければ、むしろ「引用してくれてありがとう」というのが、論文執筆者のスタイルです。 

なるべく多くの人に読んで理解して貰いたい・・と思って書くのが論文であり、政治家のメッセージも同じです。いえ、学術論文だけでなく、私のブログだって引用して頂ければありがたいと・・・思います。

・・・・・・

その鳩山論文に気になる点が幾つかあります。一つは、アジア共通通貨ACUの提唱です。 

オヒョウは、かつて20世紀末に欧州が共通通貨ユーロを確立する過程で苦労するのを見ていますから(といっても、たまたまその頃、欧州に暮らしていただけですが)、それが簡単でないのを知っています。 

率直に言って、今のアジアでは、全く無理です。 

おそらく鳩山首相が提案するACUは、中国の胡錦濤が提案する共通通貨の案に迎合するものだと思いますが、それ自体杜撰で危険な発想です。 

以下に、その問題点を挙げます。 

どの通貨を中心にすえ、どの国がイニシアチブを取るか・・・。 共通通貨といっても、実は元になる安定した複数の通貨が必要です。欧州の場合、ユーロの前に通貨バスケット制のECUを設定していますが、EUのドイツマルクとフランスフラン、イタリアリラが中心でした。

しかし、変動相場制の中でドイツマルクは常に強く、フランやリラとのバランスが取れません。 ドイツ経済自体が好調という事もありますが、ドイツ中央銀行の宿阿であるインフレへの恐怖から、ドイツマルクの価値を常に高く維持する政策を取っていたからです。

それが、東西ドイツの融合により、旧西ドイツの経済は悪化しました。統一ドイツは、旧東側のインフラ整備にお金がかかり、失業者も増えたために、マルクの力は衰えたのです。

それで英国ポンドを除く欧州主要各国の通貨のバランスが取れ、ECUが実現したのだと、オヒョウは思います。 ドイツ経済の失速が原因という怪我の功名です。

翻ってアジアの場合、土台となるEU(その前はEEC)にあたる経済共同体もありません。 ASEANは一部しかカバーしません。そして、どの通貨が中心になって通貨バスケットを設けるか・・・となれば、ASEANではない日本円と中国の人民元が中心になるでしょうが、両者は全く性格が異なります。 

人民元は、基本的にドルペッグであり米ドルのコバンザメです。中国経済が順調で成長しているのは、この恣意的な為替相場のお陰であり、もしニクソンショックの様な事態になって、人民元が切り上げられれば、中国の景気は一挙に悪化するでしょう。 

そして中国は、実態は自由経済に近いのですが、共産主義を標榜し、計画経済を掲げています。政府は自由主義国とは違う形で経済に介入します。 この国の通貨が通貨バスケットの中心になりうるか・・?はなはだ疑問です。 

第一、人民元は、つい最近まで他国通貨と自由に交換できるハードカレンシーでさえなかったのです。そもそも中国は、本当の意味でのアジアの共通通貨設立を目指すのではなく、人民元がアジアの基軸通貨になる事を目指しています。

最近までハードカレンシーでなかった・・・つまり国外に出れば保証の無い紙屑になった人民元がいきなり基軸通貨・・とはちょっと変ですが、短期間に中国経済の規模がそれだけ拡大したという事です。 

かつて日本がIMFのアジア版であるAMF(アジア通貨基金)を設立しようした時、中国は反対しました。 当時、中国のGDPは日本のそれより小さく、AMFを設立すれば日本にイニシアチブを取られると思ったからです。 その中国のGDPが日本のそれに並んだ時点で、胡錦濤は共通通貨(ACU)を提案してきました。 

AMFACUの設立趣旨には共通した部分があり、中国が前者に反対し、後者を提案するのは理屈が通りません。 要は日本が主人公では困る。自分が主人公になりたいという事です。  

今年中国のGDPは日本を抜き、世界2位になります。このままでは、米国から人民元の切り上げ圧力が高まる事は必至であり、中国としては人民元からACUに切り換える事で、その圧力をかわしたい狙いもあるでしょう。

アジア共有通貨ACUを現時点で作る事は中国を特に利する事になりますが、 それに鳩山氏が乗る・・というのは、友愛精神というより、おっちょこちょいというべき行為です。 

日本と中国が同床異夢の中で、提案するアジア共通通貨ですが、解決すべき課題、越えるべきハードルはたくさんあります。それを理解した上で鳩山首相が論文を書いたかは不明ですが、次号で、オヒョウの(偏った)見解を述べます。


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