SSブログ

【 花の名前 】 [ポップス]

【 花の名前 】 

少し前ですが、NHK BSで「世紀を刻んだ歌」として世界一有名な反戦歌「花はどこへ行った」が作られた時のエピソードを紹介していました。 

これはオヒョウの大好きな曲です。あからさまに反戦を唱えるのではなく、素朴で淡々とした表現の中に、反戦の思いが込められています。

これが、もしベトナム反戦という具合に、対象を限定してしまったら、窮屈な歌になります。ベトナム戦争が終結したら、もはや訴える対象がなくなり、唄えなくなります。 アメリカ軍を悪として北ベトナム軍を正義にして歌ってしまうと、ベトナム戦争終結後にベトナム軍がカンボジアに侵攻した事実を前に歌を唄えなくなります。 

対象を限定せず、どの戦争にも通用し、誰もが感情移入できる反戦歌はそれほど多くありませんが「花はどこへ行った」はそれに該当します。 

そして、番組ではオヒョウの知らないエピソードが紹介されていました。ピート・シーガーが一人で作詞したのではなく、ジョー・ヒッカーソンが後半の歌詞を書いており、それで、循環する曲が完成したという事。

そして、シーガーはショーロホフの「静かなるドン」にインスピレーションを受けて、歌詞を書いた事などです。

なるほど・・・、と思いながらTVを見ていてアレッ?と思いました。ヒッカーソンのインタビューで、彼は一回だけ、花と言わずにポピーと言っています。 しかし、字幕スーパーでは花となっています。

これはどういう事か?

・・・・・・・・・・

以前のブログに書きましたが、欧州戦線の戦没者に手向ける花はポピーです。ノルマンジーの上陸地点の近くにある戦没者墓地を取り囲み、地平線まで広がるのはポピーのお花畑です。 ロンドンで戦没者記念日に人々が飾るのは、ポピーの造花であり、漫画でスヌーピーが戦争を回顧するのも、ポピーの臭いからです。 だからヒッカーソンが、戦死者の墓を覆う花をポピーと考えたのはある意味で当然です。 

ではNHKはなぜ花としたのか?

・・・・・・・・・・・

その直後に、画面はショーロホフの「静かなるドン」の風景に飛びます。戦地に赴く少年コサック兵の物語に「花はどこへ行った」の民謡が登場するのだそうです。 そして、ドン川近くの平原には、地平線まで続く、懐かしいひまわり畑が広がっています。「 あれ? ロシアは行った事無いのに、このデジャビュは何だろうか? 」 すぐに思い当たるのは、イタリア映画の傑作「ひまわり」です。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが、戦争で引き裂かれた男女を演じるこの作品は傑作です。 

子供の頃、この映画を見たオヒョウは、夫婦間の感情の機微など何も判らないのに感動しました。

・・・・・・・・・

余談ですが、子供のオヒョウは広大なひまわり畑は、一体何の為にあるのだろう?と不思議に思いました。 そして後年、中国で暮らす間オヒョウは実にたくさんのひまわりの種を食べ、ひまわり畑が決して鑑賞用ではなく、食用と採油用であった事を理解しました。(勿論、ハムスターの餌にもなるでしょうが・・・)

・・・・・・・・・・

つまり、オヒョウは理解していませんでしたが、ロシアのドン川流域では戦争犠牲者を象徴する花はひまわりだったのです。 ショーロホフの時代からマストロヤンニの時代に至るまで・・・・。 

再び、脱線しますが、映画「ひまわり」では、突如丘の上にファンファーレと共に、巨大な赤旗が翻り、イタリアの敗残兵がうろたえて逃げまどう場面があります。 ソ連国内でロケをするために、ソ連のプロパガンダに加担しなければならない・・という事情があったのでしょうが、唐突で滑稽です。

たしか、60年代~70年代、イタリアでは共産党は非合法だったはずです。 

(その為に、却って左翼が先鋭化して「赤い旅団」などを結成したのですが・・)。

しかし非合法とはいっても、映画界には、それなりに共産主義にシンパシィを感じる人がいたらしく、当時の映画にはそれを伺わせるものがあります。ひまわりはその一つです。

・・・・・・・・

脱線が長くなりましたが、番組ではひまわり畑を特に印象的に映し、「花はどこへ行った」の花はひまわりであるかの様に印象操作しています。 ひょっとしたらディレクターも映画「ひまわり」に影響を受けた世代なのか?

 おそらく、ショーロホフやシーガーは、花としてひまわりを考えていたのでしょう。 一方ヒッカーソンはポピーを考えていたのかも知れません。 

国により、民族により、戦死者を悼む花は異なります。西欧ではポピー、ロシアではひまわり、インドネシアではジャスミン、そして日本では桜でしょう。

もしシーガーがその点を考え、全世界の人が唄える様に、花の名前を規定せず、歌詞を”flower”としたなら、彼は本物の反戦フォークシンガーです。 そしてその事に触れなかったNHKは、この番組製作で画竜点睛を欠いたと・・・・オヒョウは思います。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。