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【 Double Nickel その3 】 [アメリカ]

【 Double Nickel その3 】

 日本の道路の制限速度は、低すぎるし、その根拠も曖昧なので、よろしくない・・とオヒョウは思うのですが、では外国の場合はどうなのか? 

外国には外国の問題があるようです。

オヒョウが外国の制限速度について最初に話を聞いたのは、米国で鋼材貿易のエージェントだったフランク・マシニャック氏の車に同乗した時です。

彼が運転するポンティアックはいかにもスピードが出そうです。ちなみに、彼はポンティアックとは言わず、何度聞いてもポニャックと発音していました。

彼の車に乗り、オハイオ州のクリーブランドから、トレドを通り、ミシガン州のデトロイトまで走る途中で、道路の制限速度の話になりました。 

マシニャックは、日本の道路の制限速度が実態に即していないというオヒョウの説明に驚いた後「アメリカにも問題はあるさ」と語りました。

「全ての悪の元凶は、Double Nickelさ!」と語りました。

・・・・・・・

ご存じない方に申し上げれば・・・・、アメリカでは硬貨にそれぞれあだ名が付いています。

ダイムだとか、クォーターだとかペニーと呼ぶ訳ですが、ニッケルとは、文字通りニッケルでできている5セント貨の意味です。それから転じて5の意味を示します。

ダブルニッケルとは、5が二つ並んだ・・・つまり55の意味で、米国のハイウェイ(地方幹線の一般道)の制限速度です。

米国のハイウェイは基本的に、時速55マイル(88.5Km/hr)が速度上限です。 そして、アメリカのドライバーの多くは、その速度制限に不満で、ダブルニッケルとは、いまいましい規則という意味合いで言われる言葉です。 

高速道路であるフリーウェイは、もう少し速度制限が緩く、時速70マイル程度(112Km/hr)程度の区間が多い様です。 このダブルニッケルも、日本と同様、かなり古い時期に設定された数値でもはや時代遅れといっていいのです。米国でハイウェイが本格的に建設されたのは、1929年に始まった大恐慌の時の失業対策工事以降です。 高速道路であるフリーウェイ網が完成したのは第二次大戦後です。

そして、ハイウェイができて、米国のモータリゼーションが進んだ頃の自動車は、まだ低性能でした。T型フォードなどが走っていた時代です。その頃にできた規則がまだ生き残っているのです。 

マシニャックは、「その頃に比べて、格段に自動車性能が進んでいるのだから、速度規制は見直されていいはずだ。 急ぐ車はフリーウェイ(高速道路)を使えばいいではないか・・という意見は、回答になっていない」と言います。

しかし、米国の場合、長期間に亘ってインフラ整備のお金をケチっており、フリーウェイもハイウェイも、かなり傷んでいます。速度制限を緩和した場合、事故が増加する懸念はぬぐえません。 自動車性能が向上しても道路の性能が劣化すれば、速度制限を緩和できません。 米国の場合、道路予算は、各州の懐具合によって変わりますから、破産寸前にあるカリフォルニア州などは、道路整備に回す予算は更に少なくなるでしょう。 交通事故の発生件数や死亡率は州毎に集計され、一種の競争になりますから、事故件数や死亡者数を減らしたい、州政府は、速度制限緩和にかなり慎重になるでしょう。 

では他の国の場合、・・・ドイツはどうでしょうか?

ドイツのアウトバーンは、速度制限が無い事で知られていますが、実は都市部の一部区間には制限速度があります。日本からの出張者を乗せた現地駐在員が、速度制限の無い高速道路を経験させてあげようとスピードを出しすぎ、パトカーに捕まった・・などという話もあります(ちなみに、これはオヒョウの事ではありません)。 

「せっかくのアウトバーンなのに、制限速度を設けるとは・・・、つまらないではないか。 道路も自動車も高性能で、米国とは違うのに・・・」と、ドイツ人のDr.ミュッシェンボーンに尋ねると、彼は、真面目な顔で

「 確かに、ドイツは自動車も道路も高速走行が可能だ。しかし人間がついて来ない。 ドイツの場合、速度制限は、ドライバーの技量が律速となる。 高齢者も初心者も外国人も運転している道路で、速度制限無しというのは、やはり安全とは言えない 」

と、ドイツがアウトバーンの速度規制を強化していく方向に賛成の様です。 彼の意見は正論です。 

私の理解では、速度制限を考える場合、自動車性能、道路環境、運転者の技量の3要素があります。日本は道路環境が悪かった頃の、そして米国は自動車性能が低かった頃の規則がそのまま残っているので問題ですが、ドイツでは自動車性能と道路環境がOKでも運転者の技量に限界がある・・という訳です。 

実際には、ドイツの場合、他の理由もあります。東西融合後、旧東ドイツのアウトバーンが統合されましたが、道路の状態は、西側に比べて相当劣悪だったそうです。そして、旧東ドイツの国産車トラバントは、ボディがボール紙でした。それが一緒に走るとなれば、やはり速度制限が必要になるでしょう。

・・・・

それはともかく、Dr.ミュッシェンボーンが言う、最後は人間(オペレーター)がシステムの律速になるというのは、自動車交通だけの話ではありません。多くの分野で成り立つ話でしょうし、これから、その対象はますます増える筈です。高性能化、高機能化が進む情報通信機器(平たく言えば、パソコンや携帯電話ですが)も、いくらインターフェースを改善しても、いずれは人々が機能の大半を使いこなせなくなり限界がきます。

 ええ、オヒョウなどは、携帯電話の機能を使いこなしているとはとても言えません。 もっと機能が単純で低価格の機種の方がいいと思うくらいです。

道路交通の話題に戻しますが、自動車運転だって、やがてオヒョウは今の制原速度をいまいましく思うのではなく、ちょうどいいと思うかも知れません。・・・・・

勿論、それらはオヒョウ自身の変化という個人的な事情によるものですが、日本全体の高齢化が急速に進む以上、社会全体の問題でもあります。道路整備も老齢人口の増加に対応したものにすべきで、速度制限もそれに基づいて見直す必要がでてくるでしょう。

規制緩和して制限速度を上げる一方ではなく、生活道路の速度制限を強化したり、標識を見易くしたり、高速道路の逆走を防止する対策も必要かも知れません。 

Dr.ミュッシェンボーンが 「 最後は人間の問題だ 」と言った事が日本でも成り立ちます。 もっとも日本の高速道路とドイツのアウトバーンを単純に同一視する事もできませんが。


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