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【 月天心 】 [中国]

【 月天心 】

 お盆休みで、新潟県から茨城県への移動の途中、一青窈の曲を聴き続けました。彼女の曲では、評判になった「もらい泣き」や「はなみずき」が有名ですが、オヒョウは「月天心」の方が好きです。現時点ではこれが彼女の代表曲であると考えます。 

「月天心」で印象的なのは、中国語の歌詞と日本語の歌詞が交じって交互に登場する事です。 イェテェンシンという歌詞が聞こえて、ちょっと驚きました。 英語と日本語、フランス語と日本語の歌詞が混じった曲はたくさんありますが、中国語と日本語の歌詞が混じった曲は珍しいのではないか・・とオヒョウは思います。他には「夜来香」くらいでしょうか?( 音楽に疎いオヒョウが勝手に判断するのも僭越ですが・・・ )。でも多分、これからはアジアの言葉や名前を盛り込んだ曲が増えるだろうな・・などと根拠もなく漠然と考えます。

・・・・・・そして、この曲のもう一つの特徴は、ピアノの前奏の難しさです。

 茨城の家に帰ると、ちょうどNHKの「SONGSスペシャル」で一青窈の特集をしていました。

番組の中程に「月天心」が登場しましたが、 ピアノの伴奏者が「月天心は、ピアノのイントロが素晴らしい曲だ」と言いながら、ライブ演奏では完全に手抜きの演奏をしていました。ちょっと不思議です。 CDのアルバムとライブ演奏で中身が変化する曲はしばしばありますが「月天心」もその一つです。

・・・・・ところで、「月天心」は俳句にも登場します。有名な句には、与謝蕪村の「月天心 貧しき町を 通りけり」というものがあります。

「月天心」は秋の季語で、これは秋の風景を詠んだものと言われます。

 そしてこれは一つの謎です。

なぜなら、天頂に冴え冴えとした満月が輝く有様は、むしろ冬空にふさわしいとオヒョウは思うからです。つまり、この句にぴったりするのはむしろ冬の光景です。 その理由を説明するのも無粋ですが、日本の場合、冬の方が絶対湿度が低く、そのため空気の透明度が高くなり、月は明るく輝きます。寒月こそが明るく美しいのです。

 それなのに、なぜ「月天心」は秋の季語なのか?そもそも、名月は秋のもの・・、愛でるべきは中秋の名月・・というのは誰が決めたのか?

これはおそらく日本ではなく、中国でしょう。 

中国では月とは即ち秋のものです。そして満月でなければなりません。

日本では三日月も愛でますし、徒然草に「月はくまなきをのみ見るものかは」とあるように、十六夜などの欠けた月も評価します。でも、中国では月は明るい満月でなければならないのです。

そして、なぜ秋なのか・・? 

これは中国に行けば分かります。北京などで最も空が澄み渡るのは秋だからです。おそらく秋好天の満月が一番明るいに違いありません。では中国の冬はどうか? 厳冬期はそれほど飛びませんが、冬から早春は黄砂が飛ぶ季節です。黄砂で空は霞み、月の明るさは損なわれます。

・・・・・・

そして中国では、月を見て、遠方の家族や恋人を思ったり、故人を偲んだりするのが習わしです。これは重陽の節句の日に、高楼に上って遠方の人を思う習慣と、名月を眺める習慣が重なったからだと、オヒョウは思うのですが、確認できていません。

オヒョウの知る中国人で、重陽の日に高楼に上る習慣を知っていたのは一人だけでしたから・・・。(月餅を食べる習慣は皆さんご存知でしたが) 

そして月を見て、遠方の人を懐かしむ習慣は日本にも伝わりました。月を見て遠くの人を思う詩や歌は、阿倍仲麻呂以来、あまりにも多いので書き切れません。

新しい歌で一つだけ挙げるなら、中島みゆきの「帰れない者たちへ」でしょうか・・。この歌に登場する月は、満月ではなく十三夜ですが、その思いは中国の重陽の節句と共通します。

 できるなら、中島みゆきと、一青窈に尋ねてみたい。あなた方の歌に登場する月は、秋の月ですか?冬の月ですか?と。

 月天心 つまあるひとの ふみを読む


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