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【 タバコの害について 】 [医学]

【 タバコの害について 】

「タバコの害について」は医師でもあったチェーホフの小品ですが、実はその中にタバコの害に関するコメントはなく、ひたすら細君に対する愚痴に終始するという不思議な作品です。しかし、ここで申し上げるのは、本当のタバコの害についてです。
・・・・
オヒョウが会社員になった時、上司のH次長は大変なヘビースモーカーでした。人間蒸気機関車とも言えましたが、製鉄所ですから、人間焼結工場という表現もありました。 当時、上下のけじめが厳しかったその会社では、新入社員にとって次長というのは雲の上の存在で、直接話しかける事もためらわれました。しかしその次長に、生意気にも新人のオヒョウが言った事があります。
「タバコは良くないですよ。おやめになった方がよろしいですよ」と。
Hさんは露骨に嫌な顔をしました。そして次の様に語りました。
「タバコが健康に悪い事など、オヒョウに言われなくても知っている」
そして「タバコを止めるくらいなら死んだ方がましだ」あるいは「タバコが原因で死ぬなら本望だ」のどちらかを話しました。

その数年後、H次長は専門部長に昇格しました。その製鉄所では部長には個室が与えられます。 製鋼部の本部事務所を預かる工場長は、一晩で事務所内にH部長室を建設しました。 部長だから個室を・・・という配慮でもありますが、実際は、猛烈に煙を排出するHさんを個室に閉じこめようという算段です。実際、H部長室は薫製小屋みたいな有様でした。

その頃、オヒョウは結婚しました。義父(つまり家内の父)もヘビースモーカーです。再びオヒョウは生意気にも言いました。「タバコはお止めになった方がいいですよ」 義父もちょっと困った顔をしましたが、タバコを止めませんでした。

その数年後、オヒョウ夫婦に子供ができました。ある時、義父が孫を抱くと、孫は言いました。「ジーたん タバコ臭くて嫌だ!」 
この一言はそうとうこたえたらしく、義父はそれからまもなく、タバコをきっぱりと止めました。もともと意志の強い人物だったのでしょう。

さらに数年後、その義父が胃ガンに罹りました。手術で胃を全摘した訳ですが、間一髪のところでガンは転移しておらず、からくも一命をとりとめました。

そして同じ頃、H部長もガンに倒れました。残念ながらこちらは発見が遅れてガンは転移しており、ほどなく他界されました。
本来、青白い顔色の筈なのに黄疸でミカン色になっていた、柩の中の顔を見て、オヒョウは、深く後悔しました。

・・・どうせ、オヒョウ如きの進言でタバコをお止めになるはずのない、Hさんなのに、つまらん事を生意気に言って、Hさんを不愉快にさせた。
申し訳ないことだ・・・。

葬儀から帰宅後、Hさんとは古くからの友達であった義父に、
「残念なことだけど、Hさんの方はガンの進行が早く、発見時は既に
転移していて、助からなかったのです」と言うと、義父は
「そうか、そういう事だったのか」と、静かに頷き、何かに納得した様子でした。

義父はそれ以上、何も言いませんでしたが、自分とHさんの運命を比較していたのかも知れません。
・・・同じヘビースモーカーなのに、間一髪で自分が助かり、Hさんが助からなかった理由は何か?・・・・
ひょっとしたら、義父は、孫に煙たがられて禁煙したお陰でガンの進行が遅れ、命拾いしたのかも知れません。
・・・・・
勿論、根拠はないですし、それに、胃ガンと喫煙に関係があるのか・・?という疑問が残ります。また禁煙した場合、ガン抑止効果はあるのか?
確かに、胃ガンの場合、喉頭ガンや肺ガンの場合ほど、喫煙との相関は明確ではないようですし、あまりデータもありません。
ピロリ菌と胃ガンの関係が明らかになった後、胃ガンの発生因子についての研究が下火になったのかも知れません。でも胃ガンはピロリ菌だけで全てを説明できる訳ではありません。ピロリ菌に感染しても発病しない人も多いのですから・・。

とにかく、やっと見つけた東北大学のデータによれば、
非(未)喫煙者の、胃ガン罹患率を1とすると、
喫煙者の罹患率は1.84、過去喫煙者(つまり禁煙に成功した人)の
胃ガン罹患率は1.77だそうです。

やはり喫煙者は、非喫煙者の倍の確率で胃ガンになるのです。
これはヘリコバクターピロリ感染有無との相関ほどではありませんが無視していい数字ではありません。
・・・・
脱線しますが、なんでもケチをつけるオヒョウとしては、この統計調査結果にやや疑問を持ちます。共に時間の関数である事象同士の相関関係を考える場合は注意が必要だからです。
即ち、喫煙もガンも時間経過と共に比率が増加する。”経験事象”であり、下記の事が成り立ちます。
 
1.年齢が上になるほど喫煙経験率は高くなります。
2.年齢が上になるほどガン罹患経験率は高くなります。

子供であれば、タバコも吸わないし、胃ガンになった人も少ない訳です。 大人になれば、タバコも吸いますし、年齢と共に胃ガンになる人は増えます。 
だから子供も高齢者も母集団に加えて統計を取れば、どんな疾病でも喫煙との相関がでてしまいます。

さらに言えば、喫煙に限らずパラメーターが“経験事象”であれば、どれも成立するので「既婚者は胃ガンになりやすい」とか「自動車免許を持つとガンになりやすい」とか、「中学校を卒業した人は中学校を卒業していない人よりガンになり易い」なんて・・・、むちゃくちゃな結論がでてしまいます。
 
まさか、秀才の揃った東北大学の医学部がそんなミスをするとも思えませんし、それなりの統計処理をしているはずですが、このデータには喫煙の程度(毎日何本吸うか)などがありません。
過去喫煙者についても禁煙後の経過時間で罹患率が変化するはずですが、そのデータもありません。
でもまあ、ここはすなおに、データを信じましょう。
・・・・・・
それにしても、生意気な言い方で、H部長を不愉快にさせたのは、オヒョウの恥じるところですが、まてよ・・と別の考えも浮かびます。
もしHさんが、若輩のオヒョウの言葉を、すなおに耳に入れるだけの度量を持っていれば、あるいは助かったのかも知れない・・・。 

人は年齢を重ねる事で、自動的に偉くなる訳ではありません。年齢を重ねる事で聡明になる訳でもありませんし、年少者を軽んじていい訳ではありません。 理由もなく年少者の意見を軽んじる事で、健康を害したり、落命するとしたら、愚かな事です。 

Hさんを思い出し、オヒョウも反省しなくては・・・と考えた訳ですが・・・。
先日、新入社員の青年から
「 オヒョウさんも健康の為に、真剣にダイエットの事を考えた方がいいですよ 」 なんて言われると、
「 なにぃ。そんな事は、W君に言われなくたって、分かっているよ 」と
反発してしまうオヒョウは、実は分かっていない男なのです。

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